父が使っていた貸金庫を継続するか悩んでいます

世間一般的に見て、我が家は比較的裕福な方なのだろうなと、僕は子供のころから思っていました。これはまだ僕が小さかったころ、幼稚園の送り向いの時点から何となく感じていたことです。幼稚園に通っていた他の友だちは、みんな一斉にバスで帰って行くのに、僕だけは家で車を任されていた運転手が迎えに来て、一人で帰宅するのです。こんなに明確に周囲と違いがあるのが、幼稚園からずっと続けば、どんなに鈍い子供でも「あ、うちはちょっとお金持ちなんだ」と思うようになると思います。

僕の実家は、信州地方のとある県にあるのですが、その地域のいわゆる「顔役」を長く務めてきた家です。要するに「豪農」と呼ばれるようなところだった訳ですが、昔からの財を有効に活用したのでしょう、現代も裕福な家庭として生活出来ています。
一家のことを取り仕切っていたのは僕の父だったのですが、先日他界し、僕がこの家を引き継ぐことと正式になりました。そうなって初めて知ったのですが、どうも父が近くの信用金庫に貸金庫を一つ借りていたようなのです。

先日、その中身を確認してきたのですが、僕は参ってしまいました。何とわざわざ借りた金庫の中身は、父とその愛人と思われる女性の思い出の品ばかり。財産に該当する品は一つもしまわれていないことが分りました。
この父が使っていた貸金庫を継続するかどうかも悩ましいところですが、その中身を今さら母に見せなければならないのか、正直迷っているのです。